チバニアンは何が凄い?
チバニアンって何?地磁気はなぜ逆転する?皆さんはご存じでしょうか。千葉県市原市田淵の養老川沿いにある地層は、国際的に貴重な地層であることから2020年1月17日に、日本では初めてのGSSP(国際境界模式層断面とポイント)に認定されました。
よく「チバニアンに行く」「チバニアンを見てきた」という言い方をしますが、実はこれは正確ではありません。「チバニアン」は「千葉の時代」という意味で、46億年の地球の歴史を区分する「地質年代」の一つです。そして、そのチバニアンの始まりである約77万年前に起こった地磁気逆転の連続的な記録を、世界で一番よく残す貴重な地層が「養老川流域 田淵の地磁気逆転地層」なのです。
地球の歴史
市原市パンフレットより
46億年と言われる地球の歴史は、生物の進化や絶滅、気候変動などの地球規模の出来事を境に117の「地質年代」に区分されています。その一つとして、地磁気逆転を目安とした約77万4千年前から始まる時代が「チバニアン」なのです。
地質年代の境目を世界で一番よく観察できる地層をGSSP(国際境界模式層断面とポイント)と呼び、2020年1月17日に、国際地質科学連合から養老川流域田淵の地層(千葉セクションといいます)が日本で初めて認定されました。このGSSPに認定された地層のある地域名が地質年代の名前になることから、「新生代第四紀中期更新世」が「チバニアン」(=千葉の時代)と命名され、地球の歴史に日本の地名が刻まれたのです。
ゴールデンスパイク
GSSPに認定された露頭には地質年代境界を示す点に「ゴールデンスパイク」という金の鋲が打たれます。ここ田淵の地層には2022年5月21日に設置されました。
素材は「金」ではなく「真ちゅう」で、プレートも含めると約15kgの重さです。現地では見学ステージの上から間近で見ることができます。
地質年代やGSSPについては理解できたでしょうか。
では次に、地磁気の逆転ってどういうこと?について説明します。
地磁気の逆転
現在は方位磁石のNが北を指すことから北極付近にS極があることがわかりますが、過去には南極付近にS極があったことがあり、地磁気の逆転が起こったことが分かっています。
地球の中心部には鉄を大量に含む「核」があります。外側の「外核」は流動体で対流していることから電流が発生し、電磁石が作られ、それが地磁気のもととなっていると考えられています。これを「地球ダイナモ理論」と言います。また地球の自転の影響もあって地磁気の向きは一定ではなく、なんらかのきっかけで逆転が起こると考えられていますが、その理由はまだわかっていないのです。
地層の見方とポイント
チバニアンの地層は、約77万年前に起こった地磁気逆転が世界で一番詳しく記録された地層なのですが、地味で特徴のない地層です。見ただけでは分からないのです。では何が凄いのでしょう!?
①海底数百メートルで静かに堆積した約1万年分の泥の地層で、当時の地磁気の動きを連続的に記録している。
②堆積スピードが速く地層の厚みがあるため、海の生物や樹木の花粉などの微化石を多く含み、当時の気候や地球環境も調べることができる。
③77万4千年前に堆積した古期御嶽山の火山灰(白尾火山灰層)が鍵層となって地層の年代が特定され、また視覚的な目印として地質年代境界であるGSSPとなった。
④房総半島は隆起スピードが世界的に早く、新しい時代の地層が陸上に現れている。北西に向けて傾斜している地層を養老川が侵食したことで、地磁気逆転の境目の地層が現れた。
以上のようにたくさんの偶然が積み重なり、研究者の地道な努力によって発見された、まさに奇跡の地層と言えるのです。
田淵周辺の地磁気逆転を記録する地層および独特な自然地形や人為的な地形は、
2018年10月15日に国天然記念物に指定されています。(市原市ホームページ)